融資返済と林原倒産 銀行と弁護士

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林原は融資返済が困難な中で、銀行や弁護士を信用しすぎた結果、グループ解体となっています。林原は資産の叩き売りでも弁済率が90%以上であり、本業の黒字を考えると解体する必要はなかったですね。


(1)銀行融資の格付け 林原と倒産

銀行格付けで不良債権に部類されると、銀行融資を行えないことを、金融庁がマニュアルで定めていますね。上場企業を含めたほとんどの日本企業は、銀行融資が見込めなくなると資金繰り倒産をするところがほとんどになりますので、粉飾決算を行う背景となります。

林原は粉飾決算で倒産していますが、営業キャッシュフローが黒字であったことがポイントの一つとなっています。林原靖専務は、2013年に出版した破綻バイオ企業 林原の真実の中で、粉飾決算と営業キャッシュフローの黒字について言及していますので、簡単に見てみましょう。
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(2)債務超過とキャッシュフローの黒字

  1. 銀行融資 9000万円
  2. 銀行融資の返済期間 5年間
  3. 銀行融資の返済金額 1ヶ月 150万円
  4. 企業に入る現金の残額(営業キャッシュフローベース) 1ヶ月 200万円
  5. 会社は債務超過であるが営業キャッシュフローは黒字
  6. 銀行融資の金利は簡素化のためにないと仮定
金融庁が銀行融資の検査を厳格化するまでは、企業の資金繰りに焦点を充てて銀行融資を行っていました。銀行融資の事例として、融資金利がないと仮定して計算を簡略化して考えてみましょう。

銀行融資の格付け 不良債権と倒産(2)で、金融庁検査の厳格化により中小企業への融資が行いにくくなったことが背景としてあります。会計は一定の基準で資産を見ていますので、決算書の査定を厳格にすると、本業は営業キャッシュフローが黒字で事業が回っていても、債務超過となることがあります。

林原靖専務は林原を中小企業として捉えており、銀行や弁護士が倒産させたことに強い不満を感じているように見えますね。粉飾決算はよくないことですが、営業キャッシュフローが黒字で融資返済が継続されているのであれば、倒産させずに融資返済を継続したほうが経済合理性があると言えますね。

(3)林原の粉飾決算の内容 財務の問題点

  1. 損益計算書の最終利益 ほぼ正しく記載
  2. 貸借対照表の資産 保有株式や不動産を戦後すぐの安い取得価格で計上
  3. 貸借対照表の資産 特許権やノウハウなどの知的財産権 のれん代を計上せず
  4. 貸借対照表の資産 架空の売掛金
  5. 貸借対照表の負債 簿外債務の存在
  6. 決算は黒字であるが債務超過を粉飾
林原の事例は、粉飾決算で債務超過を隠していますが、営業キャッシュフローが黒字であるため融資返済は継続されている状況でした。金融庁検査が厳格化されるまでは、融資返済を行っていれば問題視されることはなかったようですが、銀行融資で財務の健全性をより厳格に見るように変化していったようですね。

非上場企業に勤める知人と話をしたことがありますが、ほとんどの人は自社の財務状況について把握していない人が多いのではないでしょうか。銀行融資は債務超過の企業に対して行うことは困難になっていますので、決算書を自社に有利な基準で計上しなければ、多数の企業が倒産して多くの失業者が発生するのが実態ですね。

資金繰り倒産 銀行ローンで回避を見ると、運転資金の調達に銀行融資が必要になることが分かりますね。林原のような優良企業であっても、銀行融資で資金調達を行っていれば、粉飾決算発覚により融資の一括返済が求められますので資金繰り倒産の経営危機になります。

(4)中国銀行と三井信託銀行に粉飾決算が発覚

林原の銀行対応と粉飾決算発覚

  1. 中国銀行 林原のメインバンク 林原が筆頭株主で10%以上の株式を保有
  2. 住友信託銀行 林原の準メインバンク
  3. 20009年 住友信託銀行の岡山支店長 取引銀行別の借入金残高の差異を指摘
  4. 2010年11月初頭 住友信託銀行の岡山支店から呼び出し 中国銀行も突然、同席
  5. 2010年11月初頭 住友信託銀行は岡山支店長 中国銀行は取締役営業本部長
  6. 2010年11月初頭 住友信託銀行と中国銀行から借入残高に違いがあることを指摘される
  7. 2010年11月初頭 中国銀行本店 林原健社長 林原靖専務 松田常務
  8. 2010年11月初頭 中国銀行本店 副頭取 担当常務 融資部長 営業部長
林原は粉飾決算の金額が縮小していたものの、中国銀行と三井住友信託銀行に粉飾決算と債務超過が発覚しています。林原は税金対策で、知的財産権や美術品などを決算書に正確に反映していなかったですが、林原靖専務によると決算に反映していれば債務超過でなかったようですね。

林原は粉飾決算の是正と今後の見通しについて、中国銀行本店で説明していますが、粉飾決算の発覚により突発破綻寸前となります。林原は粉飾決算の発覚後に、バンクミーティングを開催して全ての銀行に事情を説明せずに、中国銀行と三井住友信託銀行を優遇したことが倒産の遠因となります。

粉飾決算で突発破綻のリスク 担保の優先提供などで失敗

  • 粉飾決算の発覚
  • 不良債権先に自動で格下げ
  • 不良債権先に新規の銀行融資は困難
エステート24ホールディングス粉飾決算で倒産かまとめましたが、粉飾決算が発覚すれば自動的に格付けが不良債権に分類されることになります。林原は2010年11月末に融資の書き換え手 続きがありましたので、粉飾決算の発覚で突発破綻のリスクが発生します。
  1. 2010年11月末 住友信託銀行が下記に応じなければ不渡り処分にすると対応
  2. 2010年11月末 林原健社長の個人保証 林原靖専務の個人保証
  3. 2010年11月末 林原関係各社相互で債務保証への署名捺印
  4. 2010年12月末 社長と専務二人 関係会社の不動産と株式を追加担保
  5. 2010年12月末 林原は担保を元手に銀行対応を乗り切り 冬の賞与と給与支払い
  6. 中国銀行 不動産は登記留保ではなく登記することを要請
  7. 2011年2月 資金ショートの可能性
林原の粉飾決算発覚後、情報を知っていた中国銀行と住友信託銀行は積極的に保全を行っていることが分かります。林原が2010年11月の段階で、全銀行に粉飾決算の説明やリスケの要請を行っていれば、企業再生はよりよい条件になった可能性があります。

雪国まいたけ粉飾決算 不適切会計で倒産危機ですが、粉飾決算の発覚で銀行の新規融資を受けれない可能性があります。林原は黒字経営でしたが、雪国まいたけは赤字であるものの上場企業ですので、粉飾決算発覚後に事業存続をどのように行うのか注目ですね。

(5)弁護士の企業再生失敗 事業再生ADRと会社更生法

  1. 2010年12月上旬 中国銀行が事業再生ADR(裁判外紛争可決手続)で行う連絡
  2. 2010年12月上旬 中国銀行が西村あさひ法律事務所を紹介
  3. 西村あさひ法律事務所のトップ 松嶋英機弁護士が法制化に貢献
  4. 法律事務所 西村あさひ法律事務所
  5. 会計事務所 PWC
  6. 中国銀行から住友信託銀行も事業再生ADRの活用に同意
  7. 事業再生ADRは銀行全ての同意が必要
  8. ADRの資産査定 すぐ売却できる価格が基準 時価より低く債務超過が拡大
  9. 2011年2月2日 債権者集会で会社更生法への切り替えを表明
林原の企業再生について、中国銀行は事業再生ADRを選択して弁護士を林原に紹介しています。林原は融資返済など、銀行対応に失敗することを恐れて中国銀行から提示された条件を受け入れましたが、これが倒産理由となっています。

林原の粉飾決算を把握した後に、中国銀行と住友信託銀行が個人保証や担保差し入れで融資保全を行っているため、他の銀行から不満がでることは容易に想像がつきますね。事業再生ADRの条件が銀行全ての同意が必要であるならば、多くの銀行から融資を受けている林原にとって非常に高いハードルであったことが初めから分かります。

林原は岡山有数の優良企業として評判でしたが、林原靖専務は林原が内容を理解しないまま、事業再生ADRに同意したことに言及していますね。林原の銀行対応は、事業再生ADRに拘った結果、林原グループは倒産して解体されたと言えます。

(6)他の銀行が不満

林原の主力銀行5銀行でバンクミーティング

  1. 2011年1月11日 主力4銀行で初会合
  2. 2011年1月20日 主力4銀行に、みずほ銀行を加えて会合
  3. 中国銀行 担保登記についてADR成立に向けて努力
  4. 住友信託銀行 かなり感情的 ADR成立前提なら抜け駆けの担保や保証に対応
  5. 三菱東京UFJ銀行 有価証券担保を十分にとっており落ち着いていた
  6. 三井住友銀行 十分な担保がなかった
  7. みずほ銀行 シンジゲート・ローンの幹事銀行であり、中小銀行を束ねる立場
  8. 中国銀行と住友信託銀行に粉飾決算の情報を限定していたことに対する不満
  9. 中国銀行と住友信託銀行だけが多額の保証や担保を確保して登記
ADRの成立は、全ての銀行が再建案に納得することですが、主力5銀行の会合で納得が得られいなかったことが分かります。林原靖専務は、林原に対する不満よりも、中国銀行と住友信託銀行に対する不満がでていたことを説明しています。

林原の事業再生ADRは、銀行のうち一社でも反対を表明すれば不成立となりますが、最初から厳しいことが分かりますね。中国銀行と住友信託銀行は、融資返済が滞っても資産回収する準備を行っていましたので、粉飾決算発覚から銀行団のミーティングまでにメガバンクと大きな差があったことが分かります。

エドウィン倒産危機 ADRの理由を見ると事業再生ADR申請の前から、バンクミーティングを10回以上繰り返したものの、1年以上経営再建は特に進んでいないことが分かります。林原倒産の真相を見ると、エドウィンが事業再生ADR成立で会社再建を行うのはかなり難しいと言えそうですね。

林原の銀行融資残高

  1. 中国銀行の融資額447億円 林原が中国銀行の株式を10%以上保有で筆頭株主
  2. 住友信託銀行の融資額280億円
  3. 三井住友銀行の融資額153億円
  4. 三菱東京UFJ銀行の融資額110億円
  5. みずほ銀行の融資額83億円
  6. 山陰合同銀行の融資額46億円
  7. 伊予銀行の融資額34億円
  8. 農林中央金庫の融資額28億円
  9. 香川銀行の融資額25億円
  10. あおぞら銀行の融資額20億円
  11. 百十四銀行の融資額16億円
  12. 広島銀行の融資額16億円
  13. 阿波銀行の融資額15億円
  14. 高知銀行の融資額14億円
  15. 鳥取銀行の融資額10億円
林原の銀行融資残高について、2013年2月15日の日経ビジネスが金融期間別の銀行融資残高をまとめていますので見てみましょう。林原の銀行融資残高は、メインバンクの中国銀行と、準メインバンクの住友信託銀行が大きいことが分かります。

林原に対して、みずほ銀行がシンジゲートローン融資を取りまとめていますが、多数の地方銀行が林原に融資を行っているのは、シンジゲートローン融資に参加した可能性がありますね。林原の取引銀行が増えれば、事業再生ADRによって、融資返済を繰り延べることは難しくなります。

アイフル金融支援2014 創業者一族と外資金融の交渉理由をまとめましたが、事業再生ADRに成立したとしても、銀行との交渉は厳しいものになることが分かります。林原とアイフルを比較すれば、粉飾決算の有無だけでなく、役員保証や担保登記は大きく違うことが分かりますね。

第一回全銀行ミーティングの決裂と会社更生法の申請で倒産

  1. 2011年2月2日 第一回全銀行ミーティング
  2. 林原経営陣が手分けして銀行20社強に説明
  3. 銀行の岡山支店だけでなく、本店など複数回の説明
  4. みずほ銀行のシンジゲートローンの関係で、中国地方以外の銀行も多い
  5. 300ページほどのADR資料や関連資料を配布
  6. 2011年1月末の段階 マスコミで報道される
  7. 2011年2月2日 第一回全銀行ミーティングで住友信託銀行などへの批判
  8. 2011年2月2日 債権者集会で会社更生法への切り替えを表明
  9. 林原靖専務は専門家から、最初から民事再生法であれば経営はいまのままでよかったと言われる
林原の経営陣は事業再生ADR成立のために、第一回全銀行ミーティングへの参加を全ての銀行に出席するように呼びかけています。林原の融資のうち、みずほ銀行でシンジゲートローンを組成していますので、林原に融資を行っている銀行数は岡山から遠い地域であり非常に多いですね。

林原靖専務が専門家から指摘された内容について、事業再生ADRに固執すべきではなかったという趣旨で言われたようですね。林原が粉飾決算発覚時点で、全銀行に説明を行い中国銀行と住友信託銀行に担保や保証で優遇しなければ、民事再生法で経営陣が残ったまま企業再生できた可能性が高いです。

EDWIN倒産デマの影響について考えましたが、事業再生ADRの合意は困難であると言えますね。林原は会社更生法の申請を行いましたが、EDWINの事例を見ると粉飾決算発覚後も1年以上会社が存続しており、林原の倒産は早すぎた可能性がありますね。

(7)会社更生法の申請

  1. 会社更生法の適用を申請 林原の旧経営陣は追放
  2. 林原は西村あさひ法律事務所に実印を預けていた
  3. 林原靖専務は裁判所に提出した会社更生法の申請書に目を通す機会が与えられなかった
  4. 保全管理人に西村あさひ法律事務所のトップ 松嶋英機弁護士が就任
  5. 林原の取引先が持つ売掛債権は取引条件を変更しない条件で全額支払い
  6. 林原健社長、林原靖専務の個人資産が差押え
  7. 会社更生の場合、資産は格安で売却される
  8. 美術品処分 会計事務所のPWC
  9. 不動産処分 東急リバブル 西村あさひ法律事務所と親密
  10. 中国銀行株 中国銀行が林原保有分を時価よりも安価にTOB
林原は会社更生法の申請を行いましたが、林原靖専務は東京地方裁判所と西村あさひ法律事務所との関係をほとんど把握していなかったようですね。西村あさひ法律事務所が管財人となったことで、林原の経営陣の責任を追及する立場に完全に変わっています。

銀行や弁護士を信用するとリスクがあることは以前から指摘されていますが、林原の倒産は典型事例ですね。林原が粉飾決算の説明を銀行全てに同時に行い、銀行の抜け駆けを許さなければ、民事再生で企業再生ができた可能性が高いだけに残念ですね。

(8)弁済率93%で非常に高いが中小企業ではない

  1. 約1300億円 林原の銀行債務総額
  2. 約700億円 スポンサーである長瀬産業からの拠出額
  3. 約300億円 株式などの売却可能な余剰資産
  4. 約200億円 岡山駅前の土地 以前は2000億円以上とも言われていた
  5. 約100億円 岡山駅前以外の土地や建物
  6. 約数十億円 経営陣の私財提供
  7. 更正会社の弁済率平均11% 40%できわめてまれ
  8. 林原の弁済率93% 資産を売り急がなければさらに上昇
  9. 黒字倒産であり弁済率も高いため、企業を解体したことは疑問
  10. 岡山駅前の不動産 イオンモールの建設により商店街や百貨店に影響
林原は倒産しましたが、林原の弁済率は93%と非常に高いうえに取引先に対する支払いも行われています。林原が資産を叩き売りしなければ、本業は黒字ですので、融資返済は十分に可能であったということでしょうね。

林原の粉飾決算はよくないことですし、林原靖専務が林原を中小企業と位置づけていることには違和感を感じる売上高や負債金額です。林原の経営体制は完璧ではないですが、粉飾決算発覚時点の対応改善や民事再生適用を行っていれば、存続していた可能性が高く、銀行や弁護士を信じすぎると痛い目にあうということでしょうね。

中国銀行や住友信託銀行に半沢直樹がいれば、林原はグループ解体は免れて、倒産しなかった可能性を妄想していしまします。林原の弁済率が93%で本業が黒字であったということは、半沢直樹が担当していた伊勢島ホテルよりも経営は問題がなかったと言えそうですね。
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