大西組造船所 倒産の理由

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大西組造船所が倒産したと報じられていますが、急成長の企業は資金繰り確保が困難である事が分かると思います。海運市況の波に乗り企業再生に成功したものの、海運不況の影響も受けています。大西組造船所が倒産するまでの過程が少し変わっていますので見てみましょう。


(1)企業再生中の倒産

大西組造船所の倒産について、2013年1月22日の帝国データバンクが報じているので見てみましょう。
「広島」 既報、2009年9月8日に広島地裁より再生手続き開始決定を受けて再建中であった(株)大西組造船所(資本金5500万円、三原市須波西町1-5-25、代表西原政行氏ほか1名、従業員1名)は、1月10日に広島地裁より破産手続き開始決定を受けた。 
破産管財人は幟立廣幸弁護士(広島市中区上八丁堀8-26-306、電話082-221-1350)。
大西組造船所は倒産しましたが、企業再生中であった事が特徴的であると思います。大西組造船所の歩みについて見てみましょう。

(2)大西造船所の再生

創業が特殊

当社は、2004年(平成16年)10月創業、2005年(平成17年)3月に法人改組した造船所。(株)共栄造船所(同所)が経営不振に陥り99年4月に和議開始を申請(その後取り下げ)した後、休眠状態にあったところ、造船市況の好転をにらみ地元企業の代表らの出資を受けて当社が再開させた。
大西組造船所の創業は、経営不振の会社再生である事が分かります。市況の好調を見込んで、出資を受けて再開していますが業績は、見事なに伸びています。

市況が好調で売上が大きく増加

事業を開始後は世界的な景気拡大に伴い海運市況が好調で、当社が得意とするケミカルタンカーなどの受注も順調に拡大。2007年3月期の年売上高は約36億4400万円であったが、翌2008年3月期には約62億4200万円、2009年3月期には約87億9300万円まで急伸し、県内でも上位に入る規模にまで拡大していた。
景気拡大による、市況好調の恩恵を受けて、業績が大きく伸びています。大西組造船所は一見すると企業再生に成功しているように見えます。大西組造船所の経緯と業績について、まとめます。

業績拡大と企業再生

  • 1999年4月に共栄造船所が和議開始を申請 その後、取り下げ
  • 2004年(平成16年)10月創業 地元企業の代表らの出資を受けて再開
  • 2005年(平成17年)3月に法人改組した造船所
  • 2007年3月期売上高 約36億4400万円
  • 2008年3月期売上高 約62億4200万円
  • 2009年3月期売上高 約87億9300万円
  • 2009年9月8日民事再生手続き開始決定 約90%の債権放棄
  • 2012年3月期売上高 約2億4200万円
出資後、事業再開していますが、売上高が急騰していることが分かります。大西組造船所の売上高だけを見ると、企業再生に大成功しているように見えます。

資金繰りに注目すると、売上高の急騰がすごいので、お金の対処が難しかったようですね。管理人の推測ですが、大西造船所の売上高計上は現金回収時点ではないと思うからです

(3)資金繰りの悪化と手形払い

売上急騰に資金繰りが追いつかず 

しかし、好調な受注の一方で、先行する建造資材の調達や工場建設への投資に伴う借入金の増加が資金繰りを圧迫していた。 
大西組造船所の設立経緯を見ると、倒産寸前の会社が出資を受けて事業再開している事が分かります。つまり、手元資金はそれほど多くない事が分かります。

売上に注目すると、急騰している事が分かります。しかし、船は商品大きく金額が高いため、受注、販売、資金回収に時間が必要である事がは容易に想像できると思います。

手形払いに支払条件を変更

このため、取引先への支払いをこれまでの現金払いから手形を交えた支払いへ変更するなどの対応を進めてきたが、取引先に警戒感が広がる結果となり、資金調達や取引に支障が生じていた。 
手形や売り掛けによる資金繰りについて、茶月倒産の理由で飲食店は現金収入であることについて説明しました。飲食店やスーパーは顧客がレジで現金を支払うことが多いので、販売先がお金を支払わないリスクが極めて低いと言えます。

大西組造船所は、現金払いから手形に変更する事で、手元の資金繰りに余裕を持たせようとしています。支払条件の変更依頼は、手元資金に余裕がない事を取引先に表明することになりますので、警戒されるのは当然ですね。

民事再生法の申請 手形に注目

こうしたなか、2009年6月末の手形決済資金のメドが立たなくなり、同年6月29日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請(7月16日に改めて広島地裁へ申請)していた。
現金から手形に支払条件の変更を模索して資金繰り確保を行っていたようですが、間に合わなかったのではないでしょうか。

(4)現金と倒産の理由

  • 売上は手形で回収のため、現金がすぐに入らない
  • 支払は現金で支払のため、現金がすぐにでていく
  • 売上が急増しているが、資材の調達を先に行う必要がある
  • 船は大きいため、製造に時間がかかるうえに、単価が高い
現金に注目して考えると、大西組造船所の倒産理由が分かると思います。手形支払にかえたかった理由も分かるのではないでしょうか。
現金商売の飲食店でも、売上の急減や設備投資に失敗すると倒産することになります。運転資金と設備資金、業種などを考える重要性が、この事例からも分かるのではないでしょうか。

(5)債権放棄と企業再生の模索

債権放棄と在庫資金の軽減

同年9月8日に再生手続き開始決定を受け、約90%の債権放棄を受けて人員削減のなどの合理化を進める一方で、船体ブロックの製造を中核として資材等は船主側が支給する条件の下で船体の製造も手がけていた。 
大西組造船所は、債権放棄による負債軽減で、再生を目指しています。在庫資金軽減に繋がるように、資材は船主が支給する条件に改めて、手元現金の確保を行おうとしていますね。

売上高が激減

しかし、リーマンショック後の世界的な海運業界の低迷を受けて受注が大きく落ち込み、2012年3月期の年売上高は約2億4200万円にとどまり、大幅な赤字を計上していた。その後も受注が低調に推移するなか大幅な合理化を進めてきたが、2012年11月30日の債務弁済が困難となり事業の継続を断念、同年11月29日に同地裁より再生手続き廃止の決定を受けて、破産手続きへ移行していた。負債は約87億円
現金確保を行う体制がとれたとしても、売上高は市況の影響を受けて低調であったようです。大西組造船所の売上高を比較すると、急激に変動している事が分かります。
  • 2009年3月期売上高 約87億9300万円
  • 2012年3月期売上高 約2億4200万円
大西組造船所、倒産の理由を見ると、売上高急増への資金繰り対処と、現金回収期間が長い業種の資金繰り確保が難しい事が分かりますね。
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