(1)造船業界の動向
日本の造船業界は、為替レート円安ドル高により受注が増えており、価格競争力が回復しています。日本企業は、造船ランキングの世界1位の時期はありましたが、韓国企業と中国企業のダンピングにより苦戦してきました。国内造船ランキングを比較すれば、今治造船グループやジャパンマリンユナイテッドなどへの集約が進んでおり、川崎重工や三菱重工は撤退を進めてきました。海運会社は、自社所有すれば船の価格が高いため、用船契約を船オーナーと締結して借りることでリスクヘッジをしています。
海運市況は、過剰供給と中国景気悪化により低迷していますが、日本企業が韓国企業の受注シェアを円安を利用して奪い返しました。海運業界は、大型船舶の価格は数十億円から数百億円するため、経営のリスクコントロールが難しい業界ですね。
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(2)第一中央汽船の会社概要
- 東証一部上場の海運会社
- 1892年 住友金属鉱山が造船部設立
- 1933年 第一汽船が設立される
- 1942年 中央汽船が設立される
- 1960年 第一中央汽船に合併する
- 住友金属工業など向けのバラ積み船を運航
- 第一中央汽船は新興国需要により業績好調
- 第一中央汽船はリーマンショックによる海運不況が直撃
第一中央汽船は、住友金属工業向けなどのバラ積み船を運航しており、鉄鉱石や石炭といった鉄鋼の素材を供給してきました。第一中央汽船だけでなく、海運会社は海運市況の影響を大きく受けるため、自社所有船と用船契約のバランスが重要になります。
第一中央汽船は、商船三井が融資枠設定や優先株を引き受けており、商船三井グループの会社として知られています。商船三井は、リーマンショックの影響を最も受けた海運会社ですが、第一中央汽船も低迷した業績を回復できずに倒産していますね。
(3)海運業界の商慣習
- 船舶を用船契約により貸す
- 船舶を自社所有して市況の恩恵を得る
- 用船契約は市況悪化のときにリスクヘッジができる
- 自社所有は市況好調のときにスポット契約による利益が増える
自社所有の船舶は、海運市況が好調になれば利益を最大限に生み出すことはできますが、船舶ファイナンスによる借入は経営の重荷です。第一中央汽船は、自社所有の船舶を増やしましたが、海運市況が大幅に悪化すれば倒産の引き金になります。
用船契約は、船主が海運会社に対して長期契約により貸し出すことにより、海運市況悪化の影響をリスクヘッジすることができます。海運業界は、用船契約とスポット契約があるため、第一中央汽船のように相場の読みを外したときには倒産するということですね。
(4)海運市況の動向
- リーマンショック前 新興国需要で市況好調
- リーマンショック後 世界不況により市況悪化
- リーマンショック後 中国の景気刺激により市況回復
- 中国のバブル崩壊 上海株バブル崩壊により資源価格低迷
海運市況は、リーマンショック前の天国から地獄に転落しており、商船三井の業績悪化が話題になりました。大手海運会社は、自社所有のイメージは強いと思いますが、地方の船オーナーから大型船を調達しています。
商船三井や第一中央汽船は、大型船の自社所有割合を高めてきましたが、海運市況低迷が業績を直撃しています。第一中央汽船は、リーマンショック後に赤字が続いており、中国のバブル崩壊や商品市況低迷に耐え切れずに倒産していますね。
韓進海運倒産の理由をまとめましたが、韓国企業であれば大手企業でも、突発破綻により荷主を混乱させています。第一中央汽船は、商船三井や船主が経営支援したため、物流への混乱は最小限にしていますね。
(5)第一中央汽船の業績
第一中央汽船2013年3月期業績
- 第一中央汽船2013年3月期売上高 1405億円
- 第一中央汽船2013年3月期営業赤字 183億円
- 第一中央汽船2013年3月期経常赤字 186億円
- 第一中央汽船2013年3月期当期損失 320億円
第一中央汽船2014年3月期業績
- 第一中央汽船2014年3月期売上高 1652億円
- 第一中央汽船2014年3月期営業赤字 67億円
- 第一中央汽船2014年3月期経常赤字 86億円
- 第一中央汽船2014年3月期当期損失 154億円
第一中央汽船2015年3月期業績
- 第一中央汽船2015年3月期売上高 1523億円
- 第一中央汽船2015年3月期営業赤字 132億円
- 第一中央汽船2015年3月期経常赤字 140億円
- 第一中央汽船2015年3月期当期損失 33億円
三井住友建設倒産の可能性をまとめましたが、財閥系の企業が合併したとしても、経費削減が進むとは限りません。海運業界や建設業界は、過当競争により不景気の影響が大きいため、大手企業の倒産もよくある話です。
海運業界は、瀬戸内海の船オーナーから長期用船を行なうことにより、市況変動のリスクヘッジを行なってきました。第一中央汽船は、自社調達を増やすことにより事業拡大を狙っていましたが、市況低迷により4期連続の赤字に低迷しています。
第一中央汽船と商船三井を比較すれば、商船三井は経営規模が大きいうえに利益を蓄積してきたため、市況低迷の赤字を乗り越えたということでしょう。第一中央汽船の倒産は、中国経済のバブル崩壊により、海運市況の低迷を回復する見込がないと判断して民事再生を申請したということでしょうね。 スポンサードリンク
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