林原のCM トレハ星人
(1)林原とは
林原は岡山県内で、天然甘味料「トレハロース」などの食品原材料の研究開発・製造を手掛けていることで、有名な会社でした。トレハロースは、様々な食品に使われているだけでなく、医薬品など多岐にわたって使われています。
また、林原元社長、林原健氏の会社にほとんど出勤しない事や、メセナに力を入れるなど、同族企業として独特との経営が注目を集めてきました。
林原ですが、2010年末に不正経理が指摘され、2011年に倒産しています。林原の不正経理の概略について、週刊現代2011年11月27日号を、見てみましょう。
(2)粉飾決算の開始
84年から金融機関に虚偽の決算報告をするなどの不正経理を開始した林原。(週刊現代)林原は、2010年末に粉飾決算が明るみになり、大問題となりました。金融機関への虚偽の報告が、1984年となっており、20年以上にわたって不正経理が行われていた事になります。その内容について見てみましょう。
(3)売上水増しで債務超過解消
架空売上の計上
実際は債務超過状態だったにもかかわらず200億円以上の架空売り上げを計上、健全経営を装って金融機関からこれまでに1000億円以上の融資を受けた。(週刊現代)林原は架空の売上を計上する事で、お金があるように見せかけ融資を引き出しています。以前、売上を前倒し計上する事で、売上を水増しする方法を紹介しました。
売上高の前倒し計上
- 不動産業界の売上高の水増し
- アクセス粉飾決算の真相は売上の前倒し計上
架空在庫の可能性
管理人の推測ですが、お金があるように見せかけるために、各銀行ごとに違う決算書を用意した可能性があるのではないでしょうか。もしくは、架空の在庫を計上した可能性も考えられると思います。中国銀行は林原のメインバンクですが、なぜチェック機能が働かなかったのでしょうか。中国銀行の大株主を見ると、林原に対してメインバンクが介入しにくい背景があると簡単に分かりますね。
(4)中国銀行の筆頭株主は林原
中国銀行の株式を10%以上保有 400億円以上の融資
林原とメインバンク中国銀行の関係について、銀行ごとの融資金額の比較と株式の保有について簡単に見てみましょう。- 中国銀行の融資額447億円 林原が中国銀行の株式を10%以上保有で筆頭株主
- 住友信託銀行の融資額280億円
- 三井住友銀行の融資額153億円
- 三菱東京UFJ銀行の融資額110億円
- みずほ銀行の融資額83億円
- その他銀行
- 銀行の融資額合計 約1300億円
融資返済と林原倒産 銀行と弁護士に対して、林原は信用しすぎたため林原グループ消滅に繋がったのでしょうね。林原が中国銀行と住友信託銀行の抜け駆けを防ぐと同時に、事業再生ADRに同意しなければ、経営陣は変わらずに会社が存続したかもしれないですね。
筆頭株主であるチェック機能が働かなかったのでは
林原は長年にわたって粉飾決算が行われており、経営のチェック機能が働いていない事が明るみになりました。銀行の役目の一つに、企業経営をモニタリングすることが期待されていますが、大株主であったため、緩くなったのではないかと批判されても仕方がないかもしれません。銀行が企業へのモニタリング機能を高める方法として、試算表の確認や経営者へのヒアリングに加えて、企業への役員派遣などが言われています。林原と中国銀行の関係を見ると筆頭株主ですので、資本の論理で考えると経営に介入することは、現実的ではないと妄想しています。
(5)不正融資で書類送検されるも不起訴
融資枠の増額と担保設定
林原は、粉飾決算により会社が倒産、過去の融資について検証がされています。日経新聞2012年12月10日の報道を見てみましょう。送検容疑は、2009年に旧住友信託銀行(現三井住友信託銀行)から短期資金の融資を増額してもらうため、所有していない林原美術館(岡山市)の建物を担保にしようと計画。(日経新聞)
本来の所有者だった財団法人林原美術館の理事会の承認を得ず、担保の設定契約書に理事長の名前を記入、押印して提出し、融資枠を35億円から50億円へ不正に増額させた疑い。(日経新聞)簡単にまとめると、林原と林原美術館が別会社であるにも関わらず、林原の経営陣が代筆と押印を行い、融資枠を増加させたというものです。美術館は財団で免税の根拠は社会活動への貢献ですので、林原と美術館経営は別物であるにも関わらず、手続きを進めたことが問題視されたようですね。
林原の行動について気になるのは、銀行が理事会の議事録を確認するなどの手続きを行っていたのかどうかですね。林原と住友信託銀行が融資契約を改定するにあたって、用いられた書類と融資に至るプロセスは不明ですが極めて重要になりますね。
銀行が告訴取り下げ 不起訴に
林原の旧経営陣は、送検されましたが不正な融資増額について、結果がでたようです。時事通信12月28日が、林原旧経営陣4人を起訴猶予=抵当権の契約書偽造―岡山地検として報じています。岡山地検は28日、詐欺と有印私文書偽造・同行使の疑いで書類送検されたバイオ関連企業「林原」(破綻)の元社長(70)ら4人を不起訴処分(起訴猶予)とした。被害を受けたとされる銀行側が告訴を取り下げたことなどを考慮したとしている。林原の旧経営陣は、銀行側が告訴を取り下げた事もあり不起訴処分となったようです。林原に対して銀行側が告訴を取り下げた理由が不可解ですね。債権の弁済率で考えると極めて高い弁済率となっていますが、全額は債権回収がでておらず真相が気になります。
(6)非上場企業と銀行の関係の重要性
上場企業の場合は複数がチェック
林原は、粉飾決算で倒産しましたが、長瀬産業がスポンサーとして現れた事もあり、債権の90%以上が弁済されています。結果的に言えば、債権がほとんどカットされる、倒産企業よりはよいと言えるのかもしれません。上場企業である、オリンパスが粉飾決算と飛ばしを行っている事が話題になりました。上場企業は、証券取引等監視委員会、証券取引所、監査法人や証券会社、銀行などが動向を監視しており、会計の透明性は非上場企業よりも高いと言えます。。
監査法人の監査は会計の信頼性を高める要因ですが、オリンパスも長年の粉飾が行われており、会計監査の限界で建前になりつつあるのかもしれないですね。上場企業と非上場企業の場合を比較すると、非上場企業の場合は、銀行の役割がより重くなるのではないでしょうか。
非上場企業は銀行のチェックが重要
林原が倒産した原因と粉飾決算の真相は、中国銀行のチェックが甘かった事が原因の一つであると言えると思います。中国銀行の大株主が林原の筆頭株主であったことは、銀行のモニタリング機能を弱めたと疑われても仕方がない事だと考えられます。宮野 倒産理由は粉飾決算ですが、岡山の銀行は林原の粉飾決算の教訓を生かして、モニタリングを強化しているのか気になりますね。中国銀行は優良地銀ですし中国地方や四国地方の有力地銀ですので、特定企業に依存する資本構造にならないことが今後の教訓になりそうですね。
林原の林原靖専務が出版した内容について、破綻バイオ企業 林原の真実 歴史と粉飾決算でまとめましたが、林原の企業としての問題点が分かります。林原のビジネスモデルや経営方針は注目を集めていましたが、不動産の値上がりがなければ特許収入で研究開発費用を賄うことは厳しかったようですね。 スポンサードリンク
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