(1)グローバル企業の規模拡大
グローバル企業は、海外展開やM&Aを併用することにより、ブランド力を高めながら規模拡大を進めています。嗜好品は、タバコやビールが世界中で好まれており、高い利益率の有名企業がたくさんありますね。マルボロは、世界一のたばこブランドになっており、アメリカではアルトリアが販売を続けています。フィリップモリスは、アメリカ以外でのマルボロ販売を拡大しているだけでなく、海外企業の買収も続けて時価総額が10兆円超になっています。
アメリカ企業は、コカコーラやバークシャーハザウェイなどの優良企業が、ユーロ建て社債の資金調達を積極的に行っています。グローバル企業の株価は、高配当や自社株買いなどにより株価の値上がりを続けていますが、低金利の資金調達コストを世界中で利用することも特徴的ですね。
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(2)ヨーロッパ企業の資金調達
- 2016年3月10日 ECBが優良企業の社債を買入対象に拡大
- 2016年3月14日 ドイツテレコム 通信会社 45億ユーロ発行 4年・7年・12年
- 2016年3月14日 ラボバンク 20億ユーロ発行 10年
- 2016年3月15日 ロイヤルバンクオブスコットランド 15億ユーロ発行 7年
- 2016年3月15日 サンタンデール 15億ユーロ発行 10年の劣後債
- 2016年3月16日 アンハイザーブッシュインベブ ビール会社 132.5億ユーロ発行 4年・6年・9年・12年・20年
- 2016年3月16日 バークレイズ 15億ユーロ発行 5年
- 2016年3月16日 コメルツ銀行 10億ユーロ発行 10年劣後債
ヨーロッパ中央銀行は、EU域内の経済格差により国債買入を均等に行うことが難しいため、優良企業の社債購入を決断しています。ヨーロッパのグローバル企業は、債券の発行条件が格段によくなるため、大型の起債を金融緩和拡大後に決断しました。
銀行融資や社債は、債務償還年度を集中させてしまえば、景気変動により経営への影響が大きくなります。ドイツテレコムやアンハイザーブッシュインベブは、有利な起債の環境を利用して、複数年限の社債や長期債発行に成功していますね。
(3)ユーロ建て社債発行が過去最高
- 2009年1月社債発行額 485億ユーロ
- 2016年3月社債発行額 400億ユーロの過去最高ペース
- 2015年 アンハイザーブッシュインベブがSABミラー買収を発表
- 2015年 アンハイザーブッシュインベブは550億ユーロの社債発行計画
- 2016年1月 アンハイザーブッシュインベブが460億ドルの社債発行(1000億ドルの注文)
- 2016年3月 アンハイザーブッシュインベブが132.5億ユーロの社債発行
アンハイザーブッシュインベブは、独占禁止法回避のために欧米市場や中国市場では、ブランド売却を積極的に進めています。ビール業界は、有名ブランドを保有していることが重要になるため、買収資金調達のためにブランド売却をしすぎれば買収効果が低下します。
アンハイザーブッシュインベブは、2016年1月に過去2番目の巨大な社債発行を行っており、予定発行額300億ユーロに対して1000億ユーロの注文が殺到しています。アンハイザーブッシュインベブの社債発行は、2016年3月にも有利な環境での発行に成功しており、買収ファイナンスは大成功したということですね。
(4)日本企業の長期社債発行
- 短期社債はマイナス金利になった
- 20年の社債発行 兼松
- 30年の社債発行 大阪ガス
- 30年の社債発行 三井不動産
- 30年の社債発行 JR東日本
- 40年の社債発行 JR西日本
負債は、債務償還の期間が長くなれば倒産リスクが高くなるため、金利は高くなる傾向になります。日本の投資家は、国際金利の低下により資金運用が難しくなっているため、JR西日本の社債を大歓迎しました。
JR西日本の社債金利は、1.575%の非常に低い金利になっているため、低コストで40年間の資金調達に成功しています。優良企業は、配当利回りよりも社債金利が下回っているため、株主還元を行いやすくなっているということですね。
(5)経営者の能力を社債発行と株主還元から見極められる
- 短期社債 0%台の金利
- 長期社債 1%前後の金利
- 高配当企業 2%から3%の配当
- 社債の調達コスト<配当金など資本コスト
- 公募増資をする会社は経営能力が低い
- 経営陣の能力は減配するかどうかでも見極められる
マイナス金利は、経営者の能力を社債発行と株主還元から見極めやすいだけでなく、減損リスクを見極めることにも繋がるでしょう。神戸製鋼は、中国市場での売掛債権回収が厳しくなったため、赤字予想だけでなく無配の発表をしています。
三菱商事は、2015年度配当の減配予想を総合商社の中でも1社だけ行っているため、資源権益の減損リスクが意識されて株価が低迷しています。三菱商事の経営者は、資金調達コストが低い中で簡単に減配しているため、経営に自信がないのか減損が大量にあるのかどちらかなのでしょう。
日本企業は、株主重視の経営に変わってきたと言われていますが、日本代表企業の経営者でも保身目的に株主加減をカットしたのか疑わしい行動があります。優良企業は、低金利の社債により資金調達しやすくなっているため、株主還元を減らすのかどうかで経営能力を見極めることができるということでしょうね。 スポンサードリンク
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