(1)たばこ会社の特徴
- たばこ業界は新規参入が少ない
- たばこ会社は大手企業のブランド力が強い
- たばこ会社は大手企業の寡占化が進んでいる
- たばこ会社は設備投資や研究開発費が少ない
- たばこ会社は配当や自社株買いに積極的である
たばこ会社の業績は、大手企業は規模拡大により売上高と利益が安定しているため、株主への利益還元を積極的に続けています。リーマンショックのときに、たばこ会社は大幅な黒字を続けてきましたが、自動車業界や電機業界は大手企業が赤字になっていることに驚くことでしょう。
たばこ会社は、訴訟や経済危機が発生すれば株価は低下しますが、自社株買いを増やすことのできる十分なキャッシュフローがあります。たばこ会社を比較すれば、日本とアメリカの企業で経営手法に違いはありますが、投資対象として安定性は高く評価されていますね。
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(2)JTの2014年12月期業績
JTの業績2014年1月から12月の業績
- 日本たばこ2014年12月期売上高 2兆4335億円
- 日本たばこ2014年12月期国内たばこ事業売上高6859億円 営業利益約2000億円
- 日本たばこ2014年12月期海外たばこ事業売上高1兆1911億円 営業利益約4000億円
- 日本たばこ2014年12月期の全部門連結営業利益 6601億円
- 日本たばこ2014年12月期の全部門連結当期利益 3891億円
- 日本たばこ2014年12月期ROE株主資本利益率 19%日本企業としては高い
- 日本たばこ時価総額2015年5月20日時点 約9兆円で日本国内4位 日本一のたばこ企業
JTの特徴
- 円建てでグローバル企業に投資できる
- JTは国が筆頭株主として3分の1を保有
- JTは日本国内市場で60%以上の圧倒的なシェア
- JTはM&AによってウィンストンやLDを獲得して新興国売上高を拡大
- JTは海外売上高を拡大してきたがロシア危機などの影響により為替の影響を受ける
- JTの海外シェア2014年 イギリス41.3%
- JTの海外シェア2014年 フランス20.8%
- JTの海外シェア2014年 イタリア19.9%
- JTの海外シェア2014年 スペイン21.7%
- JTの海外シェア2014年 ロシア34.9%
- JTの海外シェア2014年 トルコ29.0%
- JTの海外シェア2014年 台湾38.4%
- JTの国内シェア2014年 日本60.0%
たばこ企業の売上高は、たばこ税を差し引いた金額を売上高として計上することは、産業の売上高を見るときに注意する必要があります。JTの売上高は、国内たばこ事業と海外たばこ事業を比較すれば、売上高と営業利益に2倍近くの差が生まれました。
JTの経営戦略をまとめましたが、ナチュラルアメリカンスピリットを獲得することにより、国内市場と海外市場のために新ブランドを獲得しています。たばこ会社は、有名ブランドを保有することが重要になるため、買収プレミアムを支払っても値上げにより資金回収がしやすい特徴があります。
JTは、RJRインターナショナルやギャラハーなどの海外買収成功により、海外市場で高いシェアを持つグローバル企業に成長しています。JTと海外たばこ企業を比較すれば、実質無借金経営により財務の健全性を保っていることが大きな特徴がありますね。
(3)フィリップモリスの2014年12月期業績
フィリップモリスの業績
- 1ドル120円でフィリップモリスの決算を計算
- フィリップモリス2014年12月期売上高 3兆5720億円 297億6700万ドル
- フィリップモリス2014年12月期営業利益 1兆4684億円 122億3700万ドル
- フィリップモリス2014年12月期税引前利益 1兆2906億円 107億5500万ドル
- フィリップモリス2014年12月期当期純利益 8992億円 74億9300万ドル
- フィリップモリス2014年12月期ROE株主資本利益率 債務超過により算定不能
- フィリップモリス2015年3月19日時点の時価総額 1219億9000万ドルで世界1位のたばこ企業
フィリップモリスの特徴
- フィリップモリスは世界最大のたばこ会社である
- フィリップモリスはアルトリアから米国国外の事業をスピンオフ
- フィリップモリスはマルボロを中心にたばこ上位銘柄を多数保有している
- フィリップモリスは為替レートドル高ユーロ安の影響により減収になっている
- フィリップモリスは自社株買いにより多額の金庫株を保有しており債務超過として表示される
- フィリップモリスは2014年12月決算時点で配当利回りが5%超に株主還元に積極的な企業として有名である
- フィリップモリスは配当よりも借入金利の方が低いため債務超過になったとしても借入による自社株買いを選択した可能性が高い
フィリップモリスの業績を見れば、営業利益や税引前利益が1兆円を超えており、高い収益力を維持していることが分かります。フィリップモリスは、為替レートがドル高になる影響を大きく受けるため、グローバル企業の代表として為替の影響は大きい経営体質ですね。
自社株買いに借金を使う理由をまとめましたが、フィリップモリスのコーポレートファイナンスは、自社株買いを続けてきました。フィリップモリスは、ドル高による低迷期に借金による自社株買いを行っているため、為替が転換すれば1株利益は急激に増加します。
フィリップモリスの特徴は、1兆円を超える自社株買いにより多額の金庫株を抱えており、貸借対照表で自己資本から金庫株を引けば債務超過になっています。フィリップモリスは、キャッシュフローが安定しているため特に問題はないですが、たばこ業界は配当や自社株買いに積極的であることの事例てして分かりやすいでしょうね。
(4)アルトリアの2014年12月期業績
アルトリアの業績
- 1ドル120円でアルトリアの決算を計算
- アルトリア2014年12月期売上高 2兆1534億円 179億4500万ドル
- アルトリア2014年12月期営業利益 9432億円 78億6000万ドル
- アルトリア2014年12月期税引前利益 9329億円 77億7400万ドル
- アルトリア2014年12月期当期純利益 6084億円 50億7000万ドル
- アルトリア2014年12月期ROE株主資本利益率142.16% 自社株買いにより大幅上昇
- アルトリア2015年3月19日時点の時価総額 1000億9660万ドルでアメリカ市場1位のたばこ企業
アルトリアの特徴
- アルトリアは米国でシェア1位のたばこメーカーである
- アルトリアはマルボロを中心とした有名銘柄を多数保有している
- 旧フィリップモリスはアルトリアやフィリップモリスを訴訟対策で分離している
- アルトリアはSABミラーの株式を25%以上保有している(SABミラーの金庫株は不明)
- アルトリアはSABミラーの配当金収入が10億ドルあるため税引前利益を押し上げている
アルトリアは、たばこ訴訟の被告として巨額の賠償金による倒産が懸念されており、株価はリスクを織り込んだため株価は暴落しています。アルトリアの株価は、配当利回りが9%以上の異常な水準にまで上昇していましたが、安定したキャッシュフローにより株主還元を続けてきました。
アンハイザーブッシュインベブ業績と買収メリットをまとめましたが、SABミラーに対して買収を提案しており、筆頭株主のアルトリアが買収に賛成するのか注目です。アルトリアの株主は、ABインベブとSABミラーが買収合意すれば、多額の買収プレミアムにより恩恵を受けることになるでしょう。
アルトリアの経営陣は、たばこ産業は新規設備投資や研究開発が小額であるため、利益の大部分を株主に還元しており大規模な自社株買いによる買戻しも行ってきました。アルトリアの株価は、訴訟リスク交代やSABミラーの株価向上により安定して上昇しており、たばこ会社に長期投資をするときの典型的な好事例になっていますね。
(5)たばこ会社の投資リスクや今後
- JTは無借金経営を行っており倒産リスクは低い
- JTはグローバル企業に成長しているが自社株買いは限定的
- フィリップモリスは自社株買いのために借入を行って大規模な株主還元をしている
- フィリップモリスは自社株買いにより金庫株を保有しているが合併や売却に使うことができる
- アルトリアはSABミラーの株式を大量に保有しておりABインベブなどへの売却により多額の利益も見込める
安全に資産を増やす方法をまとめましたが、たばこ会社はインフレに強いだけでなく、大手企業の寡占化により倒産リスクは低くなっています。たばこ会社は、株主還元を重視した経営姿勢の会社ですが、安全性を考慮すればJTとフィリップモリスの経営戦略への評価が違うことも当然でしょう。
フィリップモリスは、為替レートドル高の影響を受けやすい企業であり、自社株買いにより多額の有利子負債を抱えています。アルトリアは、米国内が事業の中心になっているためドル高の影響を受けにくいだけでなく、アメリカの人口増加やSABミラー株式の投資収入による利益を安定して見込めます。
たばこ業界は、投資対象として魅力的な業界として有名ですが、日本企業とアメリカ企業では大きな違いがあります。たばこ会社を理解するときに、国内企業と海外企業の財務内容を比較すれば、経営戦略の大きな違いが簡単に分かるため理解することが重要になりますね。 スポンサードリンク
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