(1)たばこ会社の動向
たばこ業界は、新規参入が政府規制により難しいため、独占や寡占の強い業界です。たばこは、設備投資や研究開発が少ないだけでなく、値上げによる価格弾力性の小さいことに特徴があります。政府は、たばこ税の増税を繰り返していますが、たばこ会社は値上げとリストラにより対応しています。大手たばこ会社は、利益の80%以上を株主還元しており、配当や自社株買いに積極的なことで有名です。
JTは、世界3位の上場たばこ会社として世界進出しており、フィリップモリスやブリティッシュアメリカンタバコと競争しています。たばこ会社は、政府規制による破綻を指摘されてきましたが、株式投資による高いパフォーマンスは継続していますね。
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(2)レイノルズアメリカンの特徴
- 全米2位の高シェア
- 自社株買いと増配に積極的
- 2004年 ブリティッシュアメリカンタバコが出資
- 2014年 全米3位のロリラード買収によりメンソールたばこを強化
- 2015年 JTにナチュラルアメリカンスピリットの国外事業分を売却
- 株価が5年間に4倍以上値上がりしており株主還元に積極的な会社として有名
レイノルズアメリカンタバコは、世界2位のブリティッシュアメリカンタバコグループの実質子会社になっており、アメリカでのタバコ販売を行ってきました。アメリカ企業は、M&Aや事業売却に積極的といわれていますが、ロリラード買収やナチュラルアメリカンスピリット海外事業売却にも現れています。
レイノルズアメリカンタバコは、株価が5年間で4倍以上に値上がりしているだけでなく、より長期のパフォーマンスや配当再投資により莫大な富を生み出しています。ブリティッシュアメリカンタバコは、出資により巨額の利益を生み出していますが、完全子会社化していないことにより莫大な機会損失が発生したとも言えるでしょう。
(3)ブリティッシュアメリカンタバコの失敗
- レイノルズアメリカンタバコ出資による成功
- たばこ事業からのキャッシュを新興国投資や他国投資に優先
- ブリティッシュアメリカンタバコの株価は数年間低迷していた
- レイノルズアメリカンタバコの完全子会社化コストが大幅に上昇
- レイノルズアメリカンタバコの一部事業を他社に売却してしまった
旧フィリップモリスは、フィリップモリス(米国外)とアルトリア(米国外)に分社化されており、JTは米国進出を訴訟リスクの点から見送っています。株価のパフォーマンスから見れば、米国専業のたばこ会社の方が、グローバルたばこ会社よりも成績が格段によくなっています。
ブリティッシュアメリカンタバコは、グローバル企業として、新興国などを重視する経営戦略でした。レイノルズアメリカンは、株価上昇や国外事業を他社に売却しているため、ブリティッシュアメリカンタバコの買収遅れは高コストになったということですね。
(4)レイノズルアメリカン買収価格高騰の理由
- BATのレイノルズアメリカンの買収条件 現金
- BATのレイノルズアメリカンの買収条件 株式交換
- 株価は相対的に高い レイノルズアメリカン株
- 株価は相対的に低い ブリティッシュアメリカンタバコ株
- ブリティッシュアメリカンタバコの買収遅れは既存株主に不利
たばこ会社は、訴訟による倒産リスクが懸念されているため、配当性向を高めることは株主に有利になります。たばこ訴訟は、賠償金による倒産リスクを言われてきましたが、会社を存続しなければ賠償金回収ができません。
レイノルズアメリカンは、借入によるレバレッジも活用することにより、株価暴落局面での自社株買い継続にも成功しています。買収は、買収プレミアムを直近の株価に上乗せするのが一般的になっており、レイノルズアメリカン株主は短期的にも利益を受取れたということですね。
(5)親子上場による損失と最大利益
親子上場による株価上昇は不利になる
- 浮動株が少なくなる
- 親会社の信用力やブランドによる利益が外部流出
- 株価上昇により有力インデックスに採用されて株価上昇
- 優良子会社の親子上場は買収コストが上昇していくため不利
ブリティッシュアメリカンタバコ株主の最大利益(結果論)
- ブリティッシュアメリカンタバコが借入を増やす
- レイノルズアメリカンを借入れた資金を使って早期買収
- 世界中で量的緩和による負債調達コストの低下が続いてきた
- ブリティッシュアメリカンタバコは低金利の借り換えを行う
- ブリティッシュアメリカンタバコ株主はコスト低下と利益の恩恵
- たばこ会社はインフレに強いため借入金利上昇したとしても対応できる
レイノルズアメリカンは、たばこ株として市場から見捨てられていた時期はあるものの、継続的な自社株買いと高配当によるハイパフォーマンスが注目を集めています。レイノルズアメリカンのは、S&P500やラッセル1000の採用インデックスに含まれているため、機関投資家の長期保有銘柄の対象にもなり続けています。
完全子会社化は、買収プレミアムが一般的に上乗せされるため、ブリティッシュアメリカンタバコの株式保有は株価下支えにもなってきました。ブリティッシュアメリカンタバコは、レイノルズアメリカンタバコ出資により巨額の利益を得ることに成功しましたが、完全子会社化の遅れによる逸失利益も大きくなったと言えますね。 スポンサードリンク
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